[LS]雨よけシリーズ完結記念 シムズ画

【Epilogue】





「ねぇ、今日何処いくんだっけ?」
「カラオケだろ?駅前にリニューアルオープンした店があるとかどうとか…」
「あー、あそこね!そういえばこの前、半額チケット配ってたような…」

正門の前で膝を曲げて腰を降ろしていたナミはカバンの中をゴソゴソと漁って、底の方からヨレヨレになった一枚のチケットを見つけると瞳をキラキラ輝かせた。
その様子に、傍に立っていたゾロは後頭部を掻いて呆れた様子を見せる。

「半額チケット如きで何がそんなに嬉しいんだ…」
「あ、これ1回につきその場にいる全員が有効になるんだってぇ〜」
「……、半額は、助かるよな、在り難ェよな…うん。」

自分も恩恵にあずかれると分かった途端、掌を返したゾロ。冷や汗かいてどーしたの?と嫌味に問いかけてくるナミに、ゾロは悔しそうに眉根をプルプルと震わせた。
言い返してぇ…と、顔にびっしりと書いてある。そんなゾロを軽くあしらってナミは何気なく目線を校舎へと向けた。あ、と驚いた声をあげてナミはスッと片手をあげた。

「ウソップー、カヤーっ、コッチコッチ!」


「そんでよっこれが面白いのなんのって……ってもう着いちまったのか。」
「あ、ナミさん!ごめんなさい、私達が最後でしたか?」

いつでも何処でも仲良しカップルのウソップとカヤは、ナミに声をかけられるまでしっかり結んでいた手を慌てて解いて頬を赤らめた。
その様子にナミはまた嫌味な顔をして、どうぞどうぞと続きを促した。

「あらぁ?いいのよ別にぃ、まだ皆揃ってないわけだし、そのまま続けて?」
「えっ…!」
「ぅ、うおぃナミィ〜、カヤをからかうんじゃねーよぉ〜…」

顔を見合わせあたふたと慌て始める二人に、これぞ正しきカップルの姿よねぇ…とナミは一人呟いた。
その声は隣に立っていたゾロにも聴こえていたらしく、ゾロも意味深に大きく頷いてハァと肩を竦ませるのだった。

「みんなーーっ、ごめんなさいー、遅くなっちゃって!!…ほら、コニスさんも早くっ!」
「は、っ・・・はぁっ…、はい、皆さんー、お待たせしましたぁー、へそーっ!」
「だからその“へそ”ってのはなんなんだよっ!」
「はぁ…はぁ、…すみません皆さん。私達が最後だったようですね…。」

ウソップの的確すぎるツッコミをサラッと流したコニスは、額に滲み出た汗を軽く拭りながらぐるっと周囲を見渡し、ニコリと笑顔を見せて頭を軽く下げた。
そんなコニスにすかさずビビがフォローを入れた。

「元はといえば私がつき合わせてしまったからで、コニスさんは悪くないの…
ごめんなさい、色々相談に乗ってもらっちゃって。」
「いいえ…私、ファッション雑誌観るの好きですから…。喜んでもらえるといいですね」
「…もしかして、以前仰っていた前の学校の彼氏さんへの誕生日プレゼント選び、ですか?」
「え、えぇ…その、」
「違いますよ、彼氏さんのお誕生日の日に会う約束をしたそうで、その時の服装を見立てて欲しいって言われて…」
「ちょ、コニスさんバラさないでっ!…〜〜っっ」
「へぇ〜〜、いーこと聞いちゃったぁ〜…私その日後ろから後つけちゃおうかなぁ?」
「ナミさぁんっ…!!」

気付けばすっかり女性陣だけで勝手に盛り上がってしまっていて。
あぶれ者にされたウソップは、同じくあぶれてはいたものの興味なさげに正門の外を眺めていたゾロにそっと近寄った。

「女って、時々すげぇパワフルだよなぁ。どう思うよゾロ君。」
「さぁな、興味ねぇよ」
「……ま、コニスが元気になってくれたのは良かったよな。」
「……そうだな。」

ふとゾロは、ビビに口を塞がれ軽い呼吸困難に陥っているコニスに目をやった。
あの日…。“サンジさんと、別れることになりそうです”と寂しそうに微笑んだコニスの姿が思い起こされる。
鬱蒼しいぐらいに顔をデレデレにしたアイツが、コニスを振るとかありえないと思っていたのだが…。

「…それがまさか、こういう結果になるなんてな、」
「……暑苦しいのがまた増えたな。」
「オィ、それさり気なく俺達にも向けて言ってねぇか?!」

くってかかったウソップの突き出した鼻を摘み上げることで阻止したゾロは、そろそろ頃合だろうと正門の外へと視線を向けて声を荒げるのだった。



「んで、てめぇらはいつまでやってんだっ!!」



ルフィとサンジはお互いの世界に入り込んでしまっているようで、ゾロの声はまったく届いていなかった。
軽い女子会を終えた女性陣も二人に目をやり、呆れ顔を見せるものもいれば微笑ましいと笑顔を見せるものもいて。

「…いつもラブラブですね、お二人とも」
「コッチは見てて暑苦しいわよ…んもぉ、早く行くわよ其処の二人!!!!」
「も、置いてけばいーんじゃねぇか?」
「賛成。」
「え、でも…それは、」
「コニスさん、いいんですよ。あの二人は放っておいても問題ありません、ね♪」



世界中のどのカップルよりもクソ暑苦しいオーラを漂わせて、
今日も一目を憚らず、イチャイチャベタベタと引っ付いて離れないのでした…。





END