“オーイ、ルフィボンバー!”
『…んん?』
星の瞬く静かな夜更け。
足元から聞こえてきた囁き声に、機能停止という名の睡眠状態にあったルフィボンバーの意識が浮上する。
そっと明けられた片目で自身の足元を見ると、そこには一人分の影があった。
黄緑色の身体、かまぼこ型の背びれ、胸元に《SR》と書かれたTシャツを身にまとい、ちんちくりんな尻尾を揺らすその影を、ルフィボンバーは良く知っていった。
『…あっれぇ〜、
サンジロプスじゃねェかー、久しぶりだなァ!』
「バッカ!大きな声出すんじゃねェよ!!」
『おお、ワリィワリィ』
その名はサンジロプス。
悪の権化 Dr.ウソダバダに仕えるただの女好きのエロエロ怪獣だ。
彼の他に、おにぎり怪人ゾロキラー、お花怪人ロビフラワン、に現在も悪の軍団“ウソダバ団”で今日も悪の限りを尽くしている…らしい。(※活動内容が小規模すぎて大きな被害に至らない。市民も素通りするレベル。)
かくいうルフィボンバーも、元はウソダバ団の秘密兵器として造られていたのだが、とある縁でウソダバ団と対立する正義のヒーロー、チョッパーマンと友情の仲となり、現在はチョッパーマンと共にウソダバ団と戦う日々を送っている。(とはいえ滅多に出動する機会はない。出動させると逆に街を損壊させかねないので。)
『で、サンジロプス。
どうしてこんなトコにいるんだ?ウソダバダが知ったら怒られるぞ〜?』
「ハンッ、あのクソ野郎がなんだって?俺の知ったこっちゃねェーよ!
それよかルフィボンバー、おめェちゃんと飯食わせてもらってンのかぁ?」
『んー…最近はめっきり仕事がなくて平和だろー?そんで家計が火の車だーってナミフィアが嘆いてよォ。飯は3日に1回貰えりゃ上等ってトコだな〜…にしし!』
「はぁあ!?
大食いのオメェがそんなんで平気なのかよっ!!」
『いっても俺ロボットだしな〜…肉食わなくても一応は燃料さえありゃ動けるっていうか…物足りないのは物足りないけどなっ』
「クソッ、チョッパーマンめ…!テメェが働かない所為でナミフィアすぁんもルフィボンバーも飢え死にしちまうじゃねェか…!!」
『いや、サンジロプス。
チョッパーマンが俄然働きはじめたらオメェんトコあっという間に壊滅すんじゃ…?』
正義のヒーローに、もっと働けという悪の軍団の一味。
矛盾すぎる光景を頭に描いたルフィボンバーはあははと力なく笑ってみせた。
と、サンジロプスはそんなルフィボンバーを物言いたげに見上げてから、トテトテと草むらへ向かって駆け出した。
『サンジロプス、帰んのかー?』
「違ェーよ!
…うんしょ、うんしょ!」
『なんだァ?そのデッケェ包みは……』
草むらの影になにやら隠していたらしいサンジロプスは、自身の背丈を遥かに上回るやたらと大きな包みを、必死の形相で此方へと運んでこようとしている。
が、どちらかといえば非力な方のサンジロプスには結構な大仕事らしく、全力で引っ張っても動くのは約3cm程度。
…一体ここまで何時間かけて運んできたのやら。
『あぁ、サンジロプス
そいつココに持ってくればいいのか?手伝ってやるよ』
「あ!コラ、勝手に!!」
『……ンン!?
この匂い、…っ、まさか肉かっ!?!!』
焼きたての香ばしい肉の香りが包みから漏れてくるのを瞬時に感じ取ったルフィボンバーが目をキラキラと輝かせて包みを開く。其処にはまさにこんがりといい色に焼けた骨付き肉が。
ルフィボンバーは包みと一緒に掴みあげていたサンジロプスを片手に乗せて嬉しそうに目を細めた
『俺にかっ!?なァこれ俺に持ってきてくれたのかァ!?』
「…そんなデケェ肉食えんのお前しか居ねェだろーが。ちょっと頭働かせりゃすぐ解んだろ…」
『マジかっ、ありがとうサンジロプス!』
「お、おう…」
とても嬉しそうにお礼をいうルフィボンバーにサンジロプスは視線を外し照れくさそうに頭を掻いた。
サンジロプスはルフィボンバーのこの笑顔に大変弱い。だがこの笑顔を見るのが嬉しくて仕方がない。
ルフィボンバーがウソダバダの手によって造られ、そして過ごしたほんの僅かな時間。
サンジロプスはこのルフィボンバーの純粋な笑顔を見たいが為に、彼の食事…好物の肉料理を作り続けた。
―――…笑顔が見たい、笑いかけて欲しい。傍に居たい。
次第に自分がルフィボンバーに予想外にも淡く切ない想いを抱いていると気付き始めた時、ルフィボンバーはチョッパーマンと共にウソダバ団を出て行ってしまったのだ。
その後すぐに何故かルフィボンバーが売られてしまったり、戻ってきたり。ウソダバ団の新たなロボット、フランガシャーンとルフィボンバーが戦ったりと色々あったワケだが。
再びチョッパーマンの基地に居つくこととなったルフィボンバーに、サンジロプスは一目逢いたかったのだ。
敵陣に押しかけてでも、敵側だからと愛するルフィボンバーに傷つけられることがあったとしても…。
『サンジロプスは、ほんとうに優しいヤツだな!』
「…誰にでも優しいわけじゃねーぞ、このクソロボ。
俺ぁもともと男は嫌いなんだ、お前だけが特別なんだからな…っ」
『サンジロプス…』
「オメェじゃなかったら誰がこんなトコまでクソ重てェ肉運んできてやるもんか!…オメェが居なくなっちまって…、そのうえ何処かに売られちまったって聞いて…俺がどんだけ寂しかったのか、わかってんのかっ…!?」
『・・・』
真っ赤になって心の内を伝えようとするサンジロプスにルフィボンバーは好物の肉を一度地面へと置いて、サンジロプスを手のひらに乗せ、自分の目線の正面へと運んだ。全長50mもあるルフィボンバーの目線ともなると相当な高さだろう。が、サンジロプスは目の前にルフィボンバーの瞳があると知るやいなや、それこそ顔面をトマトのように真っ赤にさせてカチコチに固まってしまった。
『サンジロプス、ありがとうな。俺、オメェのこと大好きだぞっ!』
「なっ…!!」
『コッチ着てから、オメェとずっと一緒に居られなくて、俺も寂しかったぞ。でもまさかサンジロプスから逢いにきてくれるとは思ってなくてよ…ほんと嬉しい』
「ぁ、な…っ、待…!」
『今は敵同士かもしんねェけど、やっぱ俺、サンジロプスのこと好きだから、今度は俺からサンジロプスのとこ逢いにいく!オメェが寂しくなんねェように!』
「ルフィ、ボンバー…っ」
ルフィボンバーの予想だにしない喜ばしい宣言に感極まったサンジロプスはひしと、ルフィボンバーの顔に抱きついた
ぐりぐりと頬をこすり合わせてくるサンジロプスにルフィボンバーはくすぐったそうに微笑った。
「そん時は、今よりもっと、クソデケェ肉用意してやるからなっ、ウソダバダの野郎脅してでも用意してやるからっ!」
『おう、楽しみにしてんぞっ』
―――巨大ロボットと、小さな怪獣の、まさかまさかのラブストーリー
異種☆ぱにっく
(じゃ、肉食うか、サンジロプスも一緒に食べようなっ♪)
(一緒にって…、お、おぉ、仕方がねェから食ってやんよ…!)
オマケ
「いいなぁルフィボンバーっ、あんなデッケェ肉、俺も食ってみてェ♪」
「…逢瀬はもうちょっとひっそりとやって貰いたいものだわ…寝不足よ、まったく。」
どんだけ声をひそめたとしても、相手はルフィボンバー。全長50mの巨大ロボ。
声は周囲に筒抜けでしたとさ。
めでたしめでたし。
このサイトでも異端中の異端小説、ルフィボンバー×サンジロプス
や、だって二人とも可愛すぎません?wあの雰囲気可愛すぎませんっ!?(強く同意を求める姿勢)